親方の独り言

 出来るかなあ〜と思いながら
 本日より 東泉寺改修工事に着手している
 
 観音像設置部分の白蟻食害が激しく
 何の因果か 内田工務店に依頼が来て
 うう〜む これは 一体どこを どう手を付けて良い物だろうか と思いながら
 半日かけて 現場の状況を調査し 図面を起こし
 どの程度 修復すりゃあ え〜もんじゃろうかと 悩みながら
 補修計画と見積を作成し 提出した所
 「やって下さい」に なったので
 本日より着工
 
 現場は車も近寄れず
 約250mの石段を わしと井上さんと テゴの健ちゃんと 夏休みバイトのみずきと
 4人で 一人一個ずつの 荷物を抱え
 はあはあ ぜ〜ぜ〜言いながら まずは第一便の荷揚げを完了した
 
 推定120年程度前の建物(寺)で 当時は今よりも道は整備されてないはずで
 よ〜こねえな 丸太や瓦や土を ここまで荷揚げしたもんじゃと 感心する
 当時は電気もなかった はずで
 手ノコ と ノミ と カンナ と 金槌 だけで これだけのモノを造った人達が いた
 と 言う事で 延長コードを 延々と山頂まで流しながら
 物造りに かけた人達の 気概を感じる
 
 よ〜考えたら 自分の子供の頃は 「基礎屋」と言う職業も 住宅程度では存在せず
 大工が基礎を こしらえてて 重機もなく 手でひたすら 基礎ベースを掘っていた
 200円/mで 父親から 「堀方」を請け負って
 朝 現場にスコップとガンズメと一緒に下ろされた後
 朝から晩まで ひたすら幅60cm×深さ50cmの溝(=基礎ベース)を掘り
 夕方 父親がメジャー片手に迎えに来て
 「今日は 30mだから 6000円じゃ」と バイト代を貰い
 その当時の わしにとっては ものすごい大金で
 その金で 買い食いしたり いけない本を買ったりしてた
 小学校1〜3年の頃は 一日50円で 小学校高学年になって 300円程度で
 中学生では1000円で 高校になってからは3000円 貰ってた様な気がする
 
 材料や機械より 人の値段の方が安くて
 現場の釘拾いは 一本1円で 棟上げの時も レッカーなど無く
 丸太をチェーンブロックで上げて
 今の様に 朝始めて 3時頃には上棟 などという 仕事の速さは無かった
 
 左官と大工が居れば家は建つ と オヤジは良く言ってて
 確かに 瓦さえ 平葺きは大工 棟・尾周りは左官
 内装は 塗り壁かタイル・モルタル仕上げで 一件仕上がるのに丸一年かかっていた
 
 機械も進化し 「とめ」も機械がしてくれて
 金具も進化し 工法も 人手が掛からない方法に変化し
 先代(=父親)が 生きてたら
 今 わしが している事は 「ママゴトじゃ」と言うような気がする
 
 じゃから と言って 手間暇かけて 「手刻み」をして
 施主さんに 「掛かった分だけ下さい」と言う様な事は 出来るはずもなく
 やっぱり プレカットを選択してしまうし
 「こりゃ〜 え〜」 と言うような 電動工具や なんやかや 見つけると
 有無を言わず 買ってしまう
 早くて楽で 時間を お金(機械)で買ってしまう
 
 どの辺りで 機械と腕を 両立させるか 自分自身 よ〜分からん様になってきている
 
 図面も昔は手書き だったが 今は 99%CADで
 良い癖か 悪い癖か 分からんが 「手書きの味」を残せる様に
 言いたい事は太線もしくは 大文字で
 やりたい事を 分かって貰う為にあるのが 図面で
 図面は 現場の目安に過ぎない と 今だに思ってて
 確認申請や 瑕疵保証関連の図面と 現場図面は 表現が違って当然で
 ・・・・・・なんだか 話が逸れそうなので 図面の話は 又 今度
 
 何にせよ 人が 想いを込め易い 手仕事 が 出来たのが 昔で
 今のやり方 は なかなかに 「想い」を込め難い物では あるなあ というのが実感
 
 
 ・・・・・・・・・二人とポールの家 玄関ドア釣り込み終了
 なんとも え〜仕事をしている建具では ある
 こんな蔵戸を造れた職人が 羨ましい
 Sさんの要望で 内部建具はほぼ全て 明治・大正の品で
 一つ一つ見てると なかなかに「え〜仕事」を している
 高さが 175cm程度しかないのが かなり気になるが
 「これでも良い」と 住む本人が納得すれば これもあり かなあ〜 と思う

 

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